単振子の運動方程式は、次図のように θ をとれば
と書かれる。高校の物理などでは、よく θ が十分小さければ sinθ ≒ θ と近似できるので
とやってしまう。(詳細
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これはこれでいいのだが、私はこれを初めて習ったときに
「十分小さいとはどのくらいなんだ? 厳密さを売りにしている物理でそんな言い方でいいの?」
と思った(今思うと、物理学にはそんなものはたくさん溢れているような気がする)。
上のアプレットで、左側の青い球の振子は近似を行う前のもの。
右側の赤い球は sinθ ≒ θ の近似を適用したものをシミュレーションしている。
確かに、角度の小さいうちは青球も赤球も大した差はない。
しかし、角度を大きくして振らせてみると時間が経つにつれてずれが目立ってくるようになる。
また、異なる振幅でどれだけ差が出るのかを見るために次のアプレットを作成した。
どの程度のずれが生じるかを、もっとわかりやすくするためにグラフにしてみた。
黒線が近似を行う前のもの。青線が近似を行ったあとのものである。
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θ = π/12 |
θ = π/10 |
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θ = π/8 |
θ = π/6 |
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θ = π/4 |
θ = π/2 |
これらのグラフを見ると角度が大きくなるとずれが生じ、θ = π/10 ですらも多少のずれが見られる。
参考のために、θ = π/4 と θ = π/10 をもっと長い周期で眺めてみる。
θ = π/10 を見てみると、6〜7周期くらい振れたところで、ずれが目に見えて現れてくる。
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θ = π/4 |
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θ = π/10 |
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θ = π/18 |
さて、上のグラフの最後のものは近似が成り立つと言われている θ = π/18 = 10° のものである。
確かに、長めの周期をとってみてもずれは小さい。
さて、では最後に sin(x) ≒ x の近似が成り立つとはどういうことかを見てみよう。
このグラフは y = x と y = sin(x) を 0 から π/2 までプロットしたものである。
見て分かるように、黄緑色の線で囲った部分では y = x の値も y = sin(x) の値も大した差はない。
したがって、sin(x) = x としてしまっても問題はないことになる。
だが、それよりも先に行くとだんだんとずれが大きくなってきてもはや y = x で近似するのは不可能である。
離れ始める場所のだいたいの値を読みとってみると、0.3程度である。
これを角度になおせば 17°程度。ようするに、この角度よりも小さければ sin(x) = x の近似は成り立つのである。
それでは、17°以上の角度では近似ができないのかというとそうではない。
sin(x) = x - 1/3!x
3
としてやれば、もう少し大きな角度でも sin(x) を近似できる。(詳しくは
テーラー展開参照)
一つ項を増やすだけで随分と近づいた。
だが、これをやっても最初にでてきた微分方程式は解きやすくはならないことに注意。